インテル(INTC)の株価急伸と「110億ドルの赤字」を実データで|株価が上がるほど赤字が大きく見える会計のしくみ(2026年9月)
4〜6月期の決算:売上+25%、本業の利益率は11%
2026年7月23日に発表された4〜6月期の決算の要点です。
| 項目 | 2026年4〜6月期 | 参考 |
|---|---|---|
| 売上高 | 161億ドル(前年同期比 +25%) | 前年同期 129億ドル |
| 営業利益率 | 11.1% | 前年同期 −24.7% |
| 純利益(インテル帰属) | −110億ドル | 非GAAP の1株利益は +0.42ドル |
| フリーキャッシュフロー(FCF) | +44.5億ドル | 前年同期 −15億ドル |
| 7〜9月期の会社見通し | 売上 158〜168億ドル | 1株利益 +0.31ドル(GAAP) |
売上は前の年から大きく伸び、本業の利益(営業利益)も黒字に戻っています。自由に使えるお金(FCF)もプラスでした。それなのに、最終的な損益は110億ドルの赤字です。
赤字の大半は「エスクロー株式の時価評価損」
決算リリースの調整表によると、GAAP(会計基準どおり)の赤字と非GAAP の利益の差のうち、最大の項目は「エスクロー株式の時価評価損」約125億ドルでした。
これは、CHIPS 法(米国の半導体補助金)に関連して、米国商務省に渡すことになっているインテル株を第三者に預けている(エスクロー)ものです。この株は会計上、決まった時期に渡す義務として扱われ、インテルの株価が上がると、その義務の価値も上がり、損失として計上されます。つまり、株価が上がった四半期ほど、会計上の赤字が大きく見えるしくみです。
これは現金が出ていく損失ではありません。一方で、将来の株主の取り分(持ち分)に関わる項目なので、「一時的だから無視してよい」とも言い切れません。GAAPと非GAAPの違いを知ったうえで、両方の数字を見るのが基本です。
kabu の銘柄ページでは、直近4四半期の純利益が赤字のため PER を出していません。この赤字の多くが上の評価損によるものだ、という点は数字だけでは見えないので注意が必要です。
株価と業績のズレ:乖離度 +102pt
kabu の「乖離度」は、直近2年の株価の年率の伸びから、売上(直近4四半期)の年率の伸びを引いたものです。インテルは +102pt で、kabu が乖離度を計算できる191銘柄の中で14番目に大きい値です。
| 四半期末 | 売上(直近4四半期) | 時価総額 | PSR |
|---|---|---|---|
| 2025年6月末 | 531億ドル | 993億ドル | 1.9倍 |
| 2025年12月末 | 529億ドル | 1,808億ドル | 3.4倍 |
| 2026年3月末 | 538億ドル | 2,168億ドル | 4.0倍 |
| 2026年6月末 | 570億ドル | 6,472億ドル | 11.3倍 |
1年で、売上(直近4四半期)は約7%増えたのに対し、時価総額は約6.5倍になりました。会社の値段が売上の何年分かを表す PSR は、1.9倍から11.3倍に上がっています。株価は、足元の業績よりも「受託製造(ファウンドリ)の顧客が増える」といった将来への期待を多く反映している、と読めます。
これは事実の比較で、株価の高い・低いを示すものではありません。期待が当たれば売上が伸びてズレは縮み、外れれば株価の側が動く、というのが一般的な見方です。
数字は kabu が SEC EDGAR の決算データから計算した値(2026年9月25日時点)。時価総額・PER・PSR は各四半期末の値です。
次の決算で見るポイント
- 売上の伸び:会社見通し(7〜9月期 158〜168億ドル)に対してどうだったか
- 受託製造(ファウンドリ)の外部顧客:報道されている協議が、正式な契約として発表されるか
- エスクロー株式の評価損:株価の動き次第で、GAAP の損益が大きく振れ続ける
- 現金の動き:FCF がプラスを保てるか。設備投資と、借入・出資の受け入れの状況
決算の日程は決算発表スケジュール(日本時間)で確認できます。
kabu での確認手順
- インテルの銘柄ページで、売上100円の使いみちと5年の推移(売上・利益・現金と借金)を見る
- 「株価と業績のズレ」の図で、株価の線と売上の線の開き方を見る
- AMD vs インテルで、稼ぐ力と伸びを並べる
設計する会社と作る会社の違いはファブレス・IDM・ファウンドリの違い、CPU の設計思想はx86とArmの違いへ。