米国株のアノマリー検証
「セルインメイ(5月に売れ)」「9月は鬼門」「大統領選の翌年は強い」——相場には昔から語り継がれるアノマリー(経験則)があります。このページでは、それらを語り継ぐのではなく S&P500 の過去40年・月次478本の実データで毎週再計算して、本当かどうかを数字で確かめます。結論を先に言うと:傾向は実在するが、売買の根拠にできるほど強くはない。読み物としてどうぞ。
📅 月別成績表 — 何月が強くて、何月が弱いか
各月の平均リターン(棒)と勝率(線)。最強は11月(平均+1.8%・勝率73%)、最弱は9月(平均-0.8%)でした。※勝率は月がプラスで終わった割合。
| 月 | 平均 | 勝率 | 直近20年平均 | 最高 | 最悪 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | +1.0% | 63% | +0.2% | +13.2% | -8.6% |
| 2月 | +0.2% | 57% | -0.1% | +7.0% | -11.0% |
| 3月 | +0.8% | 63% | +0.9% | +9.7% | -12.5% |
| 4月 | +1.7% | 73% | +2.3% | +12.7% | -8.8% |
| 5月 | +1.3% | 78% | +0.9% | +9.2% | -8.2% |
| 6月 | +0.3% | 60% | +0.1% | +6.9% | -8.6% |
| 7月 | +1.7% | 64% | +2.5% | +9.1% | -7.9% |
| 8月 | -0.4% | 56% | +0.1% | +7.0% | -14.6% |
| 9月 | -0.8% | 48% | -0.7% | +8.8% | -11.0% |
| 10月 | +0.9% | 63% | +0.9% | +10.8% | -21.8% |
| 11月 | +1.8% | 73% | +2.1% | +10.8% | -8.5% |
| 12月 | +1.3% | 73% | +0.6% | +11.2% | -9.2% |
🌷 セルインメイ(Sell in May)は本当か
「5月に売って11月に買い戻せ」。検証すると、冬側(11〜4月)は平均+6.8%・勝率78%、夏側(5〜10月)は平均+2.9%・勝率72%。1987年から「その半年だけ投資」を繰り返すと、冬側だけなら元本100→1204、夏側だけなら100→245。差は歴然、でも夏もプラス——つまり「夏は上がりにくい」は本当でも「売るべき」とまでは言えません(税金・取引コスト・急騰の取り逃しリスクを考えるとなおさら)。
🍂 9月効果 — 統計上いちばん弱い月
9月は平均-0.8%・勝率48%と、12ヶ月で唯一はっきり負け越している月です(直近20年でも平均-0.7%)。理由は税損売り・決算期リバランス・夏枯れ明けなど諸説ありますが決定打はなし。「9月に下がってもそれは平常運転」と知っておくと狼狽しにくい、という使い方が正解です。
🎅 12月とサンタクロースラリー
12月は平均+1.3%・勝率73%と堅調寄り。なお本来の「サンタクロースラリー」は年末最後の5営業日+年始2営業日という短い窓の話で、月次データでの検証はあくまで近似です。12月が弱い年は翌年が荒れるという言い伝えもありますが、統計的な裏付けは弱め。
🗳️ 大統領選サイクル — 「選挙後1年目」が最強
米大統領の4年任期で相場の強さが変わるという説。暦年リターンを任期の位置で平均すると、最強は選挙後1年目(平均+17.1%)、最弱は中間選挙年(平均+0.8%)でした。政権が中間選挙後〜再選に向けて景気テコ入れを図るから、という説明が定番です。ただし1986年以降でn=10回分しかなく、1回の金融危機で平均が大きく動く標本数である点は割り引いて読んでください。
🌡️ 1月バロメーター — 「1月を見れば1年がわかる」?
「1月が上がった年は、その年全体も上がる」という説。検証すると、1月がプラスだった年(n=24)の残り11ヶ月は平均+10.9%・勝率79%、1月がマイナスだった年(n=15)は平均+6.4%・勝率73%。確かに1月プラス年の方が良い成績ですが、1月マイナス年も平均ではプラス——「1月が悪い=売り」にはなりません。そもそも株式は長期で上がりやすい資産なので、「どんな年もだいたい上がる」が正解に近いです。
⚠️ アノマリーとの正しい付き合い方
①差は小さい——月別の平均差は1〜2%で、FOMCや決算1回で消し飛ぶ大きさ(FOMCの読み方)。②知られると消える——広く知られたアノマリーは先回りされて薄まる宿命。③後付けの発見——大量のパターンを探せば偶然「効く」ものが必ず見つかります(データマイニング・バイアス)。だからkabuの結論はシンプルで、タイミングはアノマリーではなく、業績と株価の乖離(実態と期待の差)で測る——乖離スコアの読み方がその方法です。アノマリーは「今月の相場の季節感」を楽しむスパイスとして。