PER・PSR・EV/EBITDAの違いとは?どの倍率をいつ使うか — 赤字企業・借金の多い企業・成長株での使い分けをわかりやすく解説
割安・割高を測る倍率は「何で割るか(利益・売上・EBITDA)」と「何を割るか(時価総額か、借金も含めた企業価値か)」の組み合わせで性格が決まります。PER・PSR・EV/EBITDA の3つを同じ表で並べると、使い分けの基準がはっきりします。
一覧表:3つの倍率の違い
| 倍率 | 計算 | 分子に含むもの | 向く企業 | 弱点 |
|---|---|---|---|---|
| PER | 時価総額 ÷ 純利益(株価 ÷ EPS) | 株主の取り分だけ | 安定して黒字の企業 | 赤字だと使えない。一過性の損益で振れる |
| PSR | 時価総額 ÷ 売上高 | 株主の取り分だけ | 赤字・高成長・SaaS | 利益率の違いを無視する |
| EV/EBITDA | 企業価値(EV)÷ EBITDA | 借金と現金も反映 | 借金の多い企業・設備産業・M&A | 設備投資(capex)を無視する |
PER — 利益で割る基本の倍率
株価が1株あたり利益の何倍かを示す、最も使われる倍率です。「利益」は税引後の純利益なので、株主の取り分に対して株価がどれだけ高いかを直接表します。弱点は分母が純利益であること。赤字なら計算できず、資産売却益や税効果などの一過性の損益で大きく振れます。シクリカルな企業ではピーク利益で PER が低く見える「低PERの罠」にも注意が必要です。
PSR — 売上で割る、赤字・成長企業向け
純利益の代わりに売上高で割ります。売上はマイナスにならないため、赤字の成長企業や SaaS でも比較できます。ただし PSR は利益率を無視します。同じ PSR 5倍でも、営業利益率 30% の会社と 5% の会社では意味が違います。PSR を見るときは粗利率や営業利益率とセットで見るのが基本です。
EV/EBITDA — 借金も含めて「会社まるごと」の値段
分子の EV(企業価値) は「時価総額+有利子負債−現金」で、株主だけでなく債権者の取り分も含めた会社を丸ごと買う値段です(時価総額と企業価値の違い)。分母の EBITDA は利払い・税・減価償却前の利益で、借金の多さや設備の償却方法の違いを取り除いて本業の稼ぐ力を比べられます。そのため、借金で設備を持つ通信・エネルギー・電力や、M&A の値付けで使われます。弱点は設備投資を無視すること。EBITDA が大きくても、それを維持するために毎年巨額の投資が要る会社では、株主に残る現金は少なくなります(FCF で補います)。
使い分けの基準(実践)
| 企業のタイプ | まず見る倍率 | 補う指標 |
|---|---|---|
| 安定黒字の大型株 | PER | PEG・過去の PER レンジ |
| 赤字・高成長(SaaS・新興) | PSR | 粗利率・成長率・FCF マージン |
| 借金の多い設備産業・電力・通信 | EV/EBITDA | FCF・純負債/EBITDA |
| シクリカル(半導体・素材) | PSR と PER の両方 | 売上の推移・サイクルの位置 |
どの倍率も絶対値ではなく、その会社の過去レンジや同業との比較で意味を持ちます。kabu の判定ページは PER・PSR の過去中央値と 25〜75% レンジを銘柄ごとに示しており、割安ランキングは PER ベースです。
よくある質問
PERとPSRはどちらを見ればいいですか?
安定して黒字なら PER、赤字や急成長中で利益が安定しないなら PSR が基本です。PSR は利益率を無視するので、粗利率・営業利益率とセットで見てください。
EV/EBITDAはなぜ借金の多い企業に向くのですか?
分子の EV が借金を含み、分母の EBITDA が利払いと減価償却の前の利益だからです。資本構成(借金の多さ)や償却方法の違いに左右されずに、本業の稼ぐ力に対する値段を比べられます。
倍率が低ければ割安と言えますか?
言えません。低 PER は利益のピークや成長鈍化の織り込み、低 PSR は低い利益率の反映であることが多いです。過去レンジや同業との比較、成長率・利益率とあわせて判断するのが中立的です。
関連用語
PER(株価収益率)PSR(株価売上高倍率)EV/EBITDA(企業価値倍率)EBITDA(利払前・税引前・償却前利益)時価総額(Market Cap)フリーキャッシュフロー(FCF)PEGレシオ(成長調整後PER)
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