時価総額1兆ドルの米国半導体4社(NVIDIA・Broadcom・Micron・AMD)を乖離とPER/PSRで比較|同じ“1兆ドル”でも中身は違う(2026年9月)
「1兆ドル」という数字だけを見ると4社は同じ位置にいるように見えます。しかし、その評価を業績(売上・利益)がどれだけ支えていて、期待がどれだけ先行しているかは会社ごとにかなり違います。本記事は kabu の乖離スコアとPER・PSRの過去レンジで4社を横に並べ、違いを数字で整理します。どの銘柄が良い・悪いという結論は出しません。
何が起きたか(報道ベース)
報道によると、AMDは9月21日の取引で株価が約9%上昇し、5営業日続伸の末に時価総額1兆ドルを初めて上回りました。米国の半導体企業で1兆ドルを超えたのは、NVIDIA・Broadcom・Micronに続き4社目とされています。背景として、AIデータセンター向け半導体の需要が挙げられています。
株価は日々動くため、1兆ドルを上回っているかどうかも日によって変わります。本記事では、日々の株価ではなく四半期ごとの業績と評価倍率で「1兆ドルの中身」を見ます。
4社の数字を並べる(kabu の実データ)
下の表は kabu が SEC EDGAR の決算データから計算した値です。PER・PSR・時価総額は各社の直近四半期末時点の株価で計算しているため、9月のAMD急騰は倍率にまだ反映されていません(次の四半期データで更新されます)。
| NVDA | AVGO | MU | AMD | |
|---|---|---|---|---|
| 直近四半期 | FY27 Q2 | FY26 Q3 | FY26 Q3 | 2026 Q2 |
| 四半期売上 | $96.2B | $29.6B | $41.5B | $11.5B |
| 売上 前年同期比 | +106% | +86% | +346% | +50% |
| 営業利益率 | 66% | 54% | 80% | 17% |
| 乖離(2年) | −47pt | +13pt | +74pt | +56pt |
| PER(現在) | 25.1× | 46.2× | 21.7× | 147.4× |
| PER 過去中央値 | 51.5× | 60.2× | 21.7× | 119.3× |
| PSR(現在) | 16.0× | 19.8× | 12.2× | 23.0× |
| PSR 過去中央値 | 22.4× | 15.5× | 4.2× | 8.3× |
| PSR 過去レンジ | 11.6–35.3× | 5.9–29.9× | 2.0–12.2× | 4.4–23.0× |
乖離=直近2年の「株価CAGR − 売上CAGR」。プラスは株価が売上の伸びより先に進んでいる(期待先行)、マイナスは売上の伸びが株価を上回っている状態です(乖離スコアの読み方)。四半期の区切りは各社の会計年度に従います。
読み方①:NVIDIA — 業績の伸びが株価を上回っている
NVIDIAは4社の中で唯一、乖離がマイナス(−47pt)です。直近2年は売上の伸びが株価の伸びを上回っていて、PERは25.1倍と、自社の過去レンジ(25.1〜143.0倍)の下限にあります。PSRも過去中央値22.4倍を下回っています。
「業績が期待に追いついた」という見方ができる一方で、倍率が下がっている理由として市場が今の成長ペースは続かないと見ている可能性もあります。倍率が低いことは「割安」と同じ意味ではない点に注意が必要です(NVIDIAの判定ページ)。
読み方②:Broadcom — 4社の中間
Broadcomは乖離が+13ptで、株価がやや先行しています。PERは46.2倍で過去中央値60.2倍より低い一方、PSRは19.8倍と過去中央値15.5倍を上回ります。売上は+86%と伸びていて、利益率も高水準です。
PERとPSRで逆の結果が出るのは、利益率が上がると、同じ売上でも利益が大きくなりPERが下がるためです。どちらの倍率を重く見るかで印象が変わる例です(倍率の使い分け・Broadcomの判定ページ)。
読み方③:Micron — PERは平均並み、PSRは過去最高(循環株の注意点)
Micronは乖離が+74ptと4社で最も大きく、PSRは12.2倍で過去レンジ(2.0〜12.2倍)の上限です。一方でPERは21.7倍と、過去中央値とほぼ同じです。
この組み合わせは、メモリのような循環株でよく見られます。売上が前年同期比+346%、営業利益率80%と利益が急拡大していると、株価が上がってもPERはあまり上がりません。メモリは需給で利益が大きく振れる業界で、過去には利益がピークのときにPERが最も低く見えた局面もありました。PERだけでなく、PSRや業界の需給サイクルと合わせて見る必要があります(メモリ半導体株の見方・AIメモリ(HBM)の2026・Micronの判定ページ)。
読み方④:AMD — 4社で最も期待が先行
AMDは乖離が+56ptで、PERは147.4倍と過去中央値119.3倍を上回り、PSRは23.0倍で過去レンジ(4.4〜23.0倍)の上限です。4社の中で、倍率が自社の過去と比べて最も高い位置にあります。
売上は+50%と伸びていますが、営業利益率は17%で、他の3社(54〜80%)より低い水準です。株価には、今後AIデータセンター向けの売上と利益率が伸びるという期待が大きく織り込まれている、という見方ができます。しかも表の倍率は6月末の株価で計算したもので、9月の上昇分はまだ入っていません。期待が実現すれば倍率は下がり、実現が遅れれば株価の振れが大きくなりやすい、という関係です(AMDの判定ページ・AMD決算Divergence分析)。
同じ1兆ドルでも中身は違う
- 業績が先行:NVIDIA(乖離マイナス、PERは過去レンジの下限)
- 中間:Broadcom(乖離が小さくプラス、PERは過去中央値より下、PSRは上)
- 利益の急拡大で倍率が抑えられている:Micron(乖離とPSRは高いが、PERは平均並み)
- 期待が先行:AMD(乖離が大きくプラス、PER・PSRとも過去中央値より上)
時価総額は「市場がいまその会社全体につけている値段」で、その中にはすでに出ている業績とこれからの期待の両方が入っています。同じ1兆ドルでも、期待の割合が大きいほど、決算や需要見通しの変化で株価が大きく動きやすくなります。どちらが良いということではなく、何に対してお金が払われているのかを知っておくための整理です(時価総額とは)。
kabu での確認手順
- 乖離ランキング(期待先行が大きい順)で、4社が全体の中でどの位置にいるかを確認。
- 各社の判定ページ(NVDA・AVGO・MU・AMD)で、PERの過去中央値・レンジと乖離の推移を確認。
- 2社ずつの比較は NVIDIA vs AMD・NVIDIA vs Broadcom で。
- 次の決算で倍率がどう変わるかは、決算発表スケジュール(日本時間)で日程を確認。
数値は週次で更新されるSEC EDGARベースのデータで、記事執筆時点(2026年9月)の値です。投資助言ではありません。