MRAM(磁気抵抗メモリ)とは?特徴と関連銘柄(Everspin・GlobalFoundries)
MRAMは「電源を切ってもデータが消えない(不揮発)のに、速くて書き換えに強い」メモリです。DRAM・フラッシュ(NAND)の“いいとこ取り”を狙う次世代メモリの一つで、まずは産業・車載・組み込みなど不揮発と耐久が効く領域から採用が進んでいます。ただし市場はまだ小さく、純粋な上場専業はEverspinほぼ1社。関連と呼ばれる銘柄も多くが小型で業績のぶれが大きいため、ストーリーと実態(売上・利益・株式数)を分けて見ることが大切です。
MRAMとは
MRAM(Magnetoresistive RAM/磁気抵抗メモリ)は、電荷ではなく磁気の向きでデータを記憶する不揮発性メモリです。一般的なメモリが「電子をどれだけ溜めたか」で0/1を表すのに対し、MRAMは「磁石の向きが平行か反平行か」で記憶するため、電源が切れても状態が保たれます。
- 不揮発: 電源を切ってもデータが消えない(フラッシュと同じ利点)
- 高速・高耐久: DRAMに近い速度で読み書きでき、書き換え回数の寿命がフラッシュより桁違いに長い(おおむね10億〜10兆回級とされ、フラッシュの数千〜数万回とは桁が違う)
- STT-MRAM: 現在の主流方式。微細化しやすく、組み込み用途での実用化が進む
既存メモリ(DRAM/NAND/SRAM)との違い
なぜMRAMが「次世代」と呼ばれるのかは、既存メモリの“弱点”と並べると分かりやすくなります。
| 種類 | 速度 | 不揮発 | 書換耐久 | 主な用途 |
| SRAM | 最速 | × 揮発 | 高い | CPUキャッシュ等 |
| DRAM | 速い | × 揮発 | 高い | 主記憶(メインメモリ) |
| NANDフラッシュ | 遅い | ○ 不揮発 | 低い(数千〜数万回) | SSD・大容量保存 |
| MRAM | DRAM近い | ○ 不揮発 | 非常に高い | 組み込み・産業 |
技術的な背景:MTJと書き換えの仕組み
MRAMは磁気トンネル接合(MTJ)という素子に情報を蓄えます。2つの磁性層(固定層と自由層)の磁化の向きが平行か反平行かで抵抗が変わり(TMR=トンネル磁気抵抗)、その抵抗差を0/1として読み出します。
- STT-MRAM(スピン注入トルク)はセルに電流を流して自由層の磁化を反転させる方式で、微細化に向き、組み込みで実用化が進む
- 研究・先行量産段階のSOT-MRAM(スピン軌道トルク)は、読み出し経路と書き込み経路を分けることでさらに高速・低消費・高耐久を狙う
- 設計は保持力(不揮発性)と書き換え速度・耐久のトレードオフ。SRAMの速度・DRAMの集積・フラッシュの不揮発の“中間”に位置する
- 1セルが比較的大きくコスト高なため、大容量の主記憶より組み込み・産業用途から普及している
どこで使われるのか(車載・産業・IoT・エッジAI)
大容量の主記憶(DRAM)を置き換えるより、まずは不揮発・耐久・低消費が効く領域から普及しています。
- 産業機器・車載・IoT: 電源断の瞬間でもデータを確実に守る用途(データロギング、設定保持、突然の停電対策)。書き換え耐久が高く、頻繁な記録に向く
- 組み込み(eMRAM): マイコンやSoCに混載していた組み込みフラッシュ(eFlash)の置き換え。28nm以降の微細プロセスではeFlashが作りにくくなるため、eMRAMが代替として効く
- エッジAI・省電力: 待機電力を抑えたい用途。電源を頻繁にオン/オフしても即座に復帰でき、待機時の消費を下げられる。常時起動が前提のセンサーやウェアラブルと相性が良い
市場の小ささと成長性
MRAMを評価するうえで最も大事な前提が、市場規模の小ささです。DRAMやNANDが年間で数百億ドル〜千億ドル規模の巨大市場であるのに対し、MRAMは桁が何桁も小さいニッチ市場にとどまります。
- 成長率は高いが、母数が小さい: 「年率二桁成長」と語られても、出発点が小さいため絶対額のインパクトは限定的。成長率(割合)と金額(絶対額)を混同しないこと
- 置き換えには時間がかかる: eFlash→eMRAMの移行や産業向け採用は、設計サイクルが長い分ゆっくり進む。テーマとしての盛り上がりと、実際の売上計上にはタイムラグがある
- 勝者は限られる: 専業1社+ファウンドリ数社という構図のため、テーマが伸びても恩恵が広く分散するわけではない
上場関連企業の正確な位置づけ
MRAMは“関連銘柄”とまとめられがちですが、実態はそれぞれ別カテゴリです。混同しないよう正確に整理します。
- Everspin Technologies (MRAM) … MRAMの純粋専業(ピュアプレイ)。トグルMRAMとSTT-MRAM製品を持ち、上場銘柄で唯一“MRAMの動向がほぼそのまま業績に出る”会社。小型株
- GSI Technology (GSIT) … MRAMではない点に注意。高速SRAMと連想メモリ(APU=インメモリ演算プロセッサ)を手がける別カテゴリの小型メモリ企業。「ニッチな高速・次世代メモリ」という括りで比較されやすいだけで、技術はMRAMと無関係
- Micron(MU) … メモリ大手だが、主力はDRAM・NAND。MRAM専業ではなく、次世代メモリ“全般”の文脈で名前が挙がる程度
- Intel(INTC) … 自社プロセスでMRAMを研究してきた大手の一例。事業全体に占めるMRAMの比重はごく小さい
多くが小型・業績ブレ大:株式数と利益率で確認
MRAM関連と呼ばれる銘柄の多くは小型で、四半期ごとの業績の振れが大きいのが特徴です。テーマ買いで株価が動きやすい分、実態を数字で押さえる必要があります。
“次世代メモリ”の物語と、実際に積み上がっている売上・利益・株式数を切り分けることが、小型テーマ株では特に効きます。バリュエーションの見方
赤字や薄利の時期が多い小型メモリ株では、利益ベースの指標がそのまま使えないことが多く、指標の選び方に注意が要ります。
- Everspin(専業): 赤字の四半期はPERが意味を持たない(EPSがマイナスだと計算不能)。その場合はPSR(売上倍率)や、フリーキャッシュフロー・手元現金(資金が尽きないか)を確認。特定顧客への売上依存度にも注意
- ファウンドリ(GFS等): MRAM単独ではなく、ファウンドリ全体の売上・稼働率・粗利率で評価する。MRAMはあくまで“上乗せ要素”であり、株価の主因ではない
- PSRの落とし穴: 売上が小さいと小さな受注変動でPSRが大きく動く。割安/割高は過去レンジや同業比較の中で相対的に見る(kabuのバリュエーション時系列で中央値・25–75%レンジと照合)
kabuでの確認手順
テーマの“雰囲気”ではなく実態で判断するために、kabuでは次の順で見ると効率的です。
- ビューアーで対象銘柄(例: MRAM)を開き、株価ライン(市場の期待)と売上・純利益のバー(実態)の乖離を確認する
- 売上連動の理論株価(点線)と実際の株価のズレを見て、ストーリー先行になっていないかを把握する
- バリュエーション時系列でPSR・PERを、過去中央値(点線)と25–75%レンジ(帯)と照らす
- 常時表示の乖離スコア(株価CAGR vs 売上CAGR)で、株価の伸びが売上の伸びに支えられているかを見る
- 乖離ランキングで、テーマ内の他銘柄と乖離の大きさを相対比較する
リスク
MRAMは市場規模がまだ小さく、DRAM・フラッシュ(NAND)との価格・容量競争に常にさらされます。
- 小型株の値動き: 専業のEverspinは小型ゆえに株価の振れが大きく、四半期業績や単一顧客の影響を受けやすい
- 希薄化リスク: 成長投資や赤字を埋めるための増資で発行済株式数が増え、1株価値が薄まる可能性
- 普及スピード: eFlash置き換えや産業採用は進むものの、設計サイクルが長く時間がかかる。テーマの盛り上がりが先行しやすい
- 大手の参入・代替: ファウンドリ大手や他の次世代メモリ(ReRAM・PCM等)との競合で、専業の優位が揺らぐ可能性
よくある質問
MRAMとは何ですか?
磁気の向きでデータを記憶する不揮発性メモリです。電源を切っても消えず(フラッシュの利点)、DRAMに近い速度と桁違いに高い書き換え耐久を併せ持つ「いいとこ取り」を狙う次世代メモリで、産業・車載・組み込み・エッジAIなど、容量より“消えない・壊れにくい・省電力”が価値になる領域で採用が進んでいます。
MRAMはDRAMやNAND、SRAMと何が違うのですか?
SRAM・DRAMは速いが電源を切ると消え(揮発)、NANDフラッシュは消えないが遅く書き換え回数の寿命が短いという弱点があります。MRAMは不揮発・DRAM近い速度・非常に高い書換耐久を同時に狙えるのが独自点です。ただし1セルが比較的大きくビット単価が高いため、現状はDRAMの主記憶やNANDの大容量保存をそのまま置き換えるのではなく、組み込み・産業用途から普及しています。
MRAMの関連銘柄(米国株)は?それぞれの位置づけは?
純粋専業はEverspin Technologies(ティッカー MRAM)の事実上1社で、MRAMの動向がほぼそのまま業績に出ます。GSI Technology(GSIT)はMRAMではなく高速SRAM・連想メモリ(APU)の別カテゴリ企業で、“ニッチな高速メモリ”として比較されるだけです。Micron(MU)やIntel(INTC)は大手で、MRAMは事業のごく一部か研究段階。組み込みMRAMの量産はGlobalFoundries・Samsung・TSMC等のファウンドリが担います。
MRAMはDRAMやフラッシュを全面的に置き換えますか?
当面は全面置き換えではありません。不揮発・高耐久・低消費が効く領域(産業・車載・組み込みフラッシュの置き換え)から段階的に普及しています。市場はまだ小さく、価格・容量の面でDRAM/NANDと競合するため、置き換えにはまだ時間がかかります。
小型のMRAM関連株を見るとき、特に何を確認すべきですか?
テーマ買いで動きやすいので実態を数字で押さえます。発行済株式数(増資による希薄化)、時価総額、営業利益率・純利益のトレンド、粗利率の安定性、売上のTTM推移を確認しましょう。赤字でPERが使えない時期はPSRやフリーキャッシュフロー・手元現金で見ます。特定顧客への売上依存度も要チェックです。
kabuではどう確認すればいいですか?
ビューアーで対象銘柄を開き、株価ライン(市場の期待)と売上・純利益のバー(実態)の乖離を見ます。バリュエーション時系列でPSR・PERを過去中央値・25–75%レンジと照らし、乖離スコア(株価CAGR vs 売上CAGR)で株価の伸びが売上に支えられているか確認します。乖離ランキングで他銘柄との相対比較も有効です。なお本ツールは投資助言ではありません。
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