オラクル(ORCL)のAI投資と借金を実データで|本業は稼いでいるのに現金が出ていく理由とCDS上昇の見方(2026年9月)
一方で、決算を見ると本業はしっかり黒字です。本記事では kabu の実データ(SEC EDGAR)で、本業で稼いだお金とAIデータセンターへの投資で出ていくお金を分けて並べ、なぜ「黒字なのに現金が減る」状態になっているのかを整理します。良い・悪いの判断はしません。
CDS とは何か、何が報じられているか
CDS は、社債を持つ人が「その会社が返せなくなったとき」に備えて払う保険料のようなものです。保険料が上がる=市場がその会社の返済能力を以前より心配していることを表します。報道では、オラクルのCDSは7月に約18年ぶりの高水準をつけ、9月には過去最高を更新したとされています。背景として、AIデータセンター向けの大きな設備投資と、その資金を借金でまかなっていることが挙げられています。
CDS は市場参加者の見方を映す値で、実際に返済が滞っていることを示すものではありません。ここからは、決算の数字で何が起きているかを見ます。
本業は稼いでいる:売上100円で25円が残る
オラクルの2026年5月期(通期)の売上は $67.4B で、前の年度($57.4B)から +17%。直近4四半期の合計で見ると前年同期間比 +22% と、伸びは加速しています。直近の四半期(2026年6〜8月)の営業利益率は 34.8% です。
売上100円あたりで見ると、2026年5月期は最後に 約25円 が純利益として残りました(2023年5月期は17円、2024年5月期は20円)。もうけの率は上がっています。内訳はオラクルの銘柄ページの「売上100円の使いみち」で図にしています。
それでも現金が出ていく理由:設備投資が営業CFを上回る
利益が出ていても、それ以上のお金をデータセンター(建物・電力設備・サーバー)に使えば、手元の現金は減ります。下の表は四半期ごとの、本業で入ったお金(営業CF)と設備投資、その差(FCF=自由に使えるお金)です。
| 四半期(期末) | 売上 | 営業CF | 設備投資 | FCF |
|---|---|---|---|---|
| 2025年5月 | $15.9B | $6.2B | $9.1B | −$2.9B |
| 2025年8月 | $14.9B | $8.1B | $8.5B | −$0.4B |
| 2025年11月 | $16.1B | $2.1B | $12.0B | −$10.0B |
| 2026年2月 | $17.2B | $7.2B | $18.6B | −$11.5B |
| 2026年5月 | $19.2B | $14.6B | $16.5B | −$1.9B |
| 2026年8月 | $19.3B | $23.1B | $28.5B | −$5.4B |
直近4四半期の合計では、営業CF $46.9B に対して設備投資は $75.7B。差し引きの FCF は −$28.7B です。年度で見ると、売上100円あたりの FCF は 2023年5月期の 17円、2024年5月期の 22円 から、2025年5月期に −1円、2026年5月期に −35円 へと大きく変わりました。本業の稼ぐ力が落ちたのではなく、投資額が本業の稼ぎを上回った、というのが数字の読み方です。
借金と手元資金
不足分は主に借入でまかなっています。借金(社債・借入金の合計)は、2022年5月末の約 $76B から、2025年5月末に $93B、2026年5月末に $130B へ増えました。直近の2026年8月末は $125B です。
同じ時点の手元資金(現金と短期投資)は $37B。自己資本比率は 22% です。直近4四半期の FCF(−$28.7B)のペースで計算すると、手元資金は 約1.3年分にあたります。ただしこれは「新たな借入や資金調達をしない」と仮定した機械的な計算で、実際には会社は社債の発行などで資金を調達し続けています。資金繰りの見通しを示すものではありません。
kabu の銘柄ページの「つぶれにくい?」カードは、FCF がマイナスの会社についてこの「手元資金は何年分か」を出しています(3年未満は「注意」)。
株価はどう見ているか
オラクルの PER(直近12か月)は 23.8倍 で、kabu が計算できる過去の範囲(23.8〜51.7倍)の下限、過去中央値(34.4倍)より低い水準です。PSR は 6.3倍で過去中央値(6.5倍)並みです。直近2年の乖離度(株価の年平均成長率 − 売上の年平均成長率)は −13pt で、業績先行(売上の伸びが株価より速い)の状態です。
利益に対する株価の倍率が自社の過去より低いのは、市場が投資の回収や借金の増加を差し引いて見ている可能性があります。倍率が低いことは割安と同じ意味ではありません(オラクルの判定ページ)。
次の決算で見るポイント
- 設備投資と営業CFの差:投資額が営業CFに近づけば FCF のマイナスは縮みます。四半期ごとの差が広がるか縮むかが一つの目安です。
- 借金の残高:借入のペースと、手元資金との差。
- 売上の伸び:データセンター投資がクラウド売上の伸びとして回収されているか。売上100円あたりの利益が保てているか。
- 受注残(契約済みで未計上の売上):会社が開示する将来の売上の見通しで、投資の回収の手がかりになります。数字は決算資料で確認してください。
日程は決算発表スケジュール(日本時間)で確認できます。
kabu での確認手順
- オラクルの銘柄ページ:5つの質問、売上100円の使いみち(流れ図と年度ごとの推移)、財務ハイライト。
- Oracle vs Salesforce・IBM vs Oracle:同業と、売上100円あたりの FCF の推移を並べて比較。
- 用語:FCF・設備投資・営業CF・自己資本比率。
数値は SEC EDGAR の提出書類(10-Q・10-K)から kabu が四半期ごとに計算した値で、2026年9月時点のものです。投資助言ではありません。