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技術解説 / AI

ニューラルネットからTransformerへ — AIの仕組みとGPU・メモリ需要の爆発

ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)の根っこには、Transformerという2017年に登場した仕組みがあります。本稿では、ニューラルネットの基礎から始めて、なぜTransformerが大規模化に向き、それがGPU・高速メモリ・データセンターへの爆発的な需要を生んだのかを、技術の流れとして順を追って解説します。技術を理解すると、関連する上場企業の業績や株価をより冷静に見られるようになります。

ニューラルネットの基礎 — 「重み」を調整して学ぶ

AIの最小単位は、生物の神経をまねたニューロン(パーセプトロン)です。複数の入力それぞれに「重み」を掛けて足し合わせ、ある閾値を超えたら信号を出す、という単純な計算をします。

  • 1個では直線的な単純な判別しかできない
  • 多数のニューロンを状に重ねた「多層ニューラルネット(ディープラーニング)」にすると、複雑なパターンも表現できる
「学習」とは、正解との誤差が小さくなるように、無数の重みを少しずつ調整していく作業です。最初はランダムだった重みが、膨大なデータを何度も通すうちに、入力と正解を結ぶパターンを少しずつ獲得していきます。この重み調整(誤差逆伝播)が、大量の掛け算・足し算の繰り返しであることが、後の計算需要の出発点になります。層を深く・幅を広くするほど表現力は上がりますが、その分だけ調整すべき重みと計算量も増えていく、という関係をまず押さえておきましょう。

画像のCNN、系列のRNN/LSTM

用途に応じて、ニューラルネットには得意な型が生まれました。

  • CNN(畳み込み):画像向け。小さなフィルタを画像上で滑らせ、エッジや形といった局所的な特徴を段階的に抽出する。画像認識で大きく成功した
  • RNN / LSTM:文章や音声など「並び(系列)」向け。前の情報を内部の記憶に持ち越しながら、単語を1つずつ順番に処理する
RNN系は、時間の流れを扱える点で言語処理の主役でした。しかし次節の限界が、Transformer登場の伏線になります。

RNNの限界 — 長い文脈と「並列化できない」問題

RNN/LSTMには2つの根本的な弱点がありました。

  • 長い文脈が苦手:単語を1つずつ順送りで処理するため、文の最初の情報が後半まで届きにくく、長文での関係づけが弱くなる
  • 並列化できない:「前の単語を処理し終えてから次へ」という逐次処理なので、原理的に同時並行で計算できない。GPUのように大量の計算を一斉に走らせるハードと相性が悪い
つまり、データやモデルを大きくしても、計算を素直に並列化して速くできない。この「並列化できない」という制約こそ、次のブレイクスルーが乗り越えた壁です。

2017年、Transformerとアテンションの発想

2017年の論文「Attention Is All You Need」で登場したTransformerは、RNNの逐次処理を捨て、アテンション(Attention)という仕組みに置き換えました。発想はシンプルです。

  • 文中のすべての単語の関係を一度に見て、「どの単語がどの単語にどれだけ注目すべきか」を重みとして計算する
  • 「川のbank」と「銀行のbank」のように、文脈に応じて各単語の意味を周囲から動的に決められる
順番に依存せず全単語を同時に突き合わせるため、並列化しやすい。長い文脈の遠い単語どうしも直接つなげられる。RNNの2つの弱点(長文の苦手さと逐次処理)を同時に解いたのが決定的でした。当初は機械翻訳のための仕組みでしたが、その汎用性の高さから、やがて言語処理全般の標準的な土台へと広がっていきます。

なぜTransformerは大規模化(LLM)に向くのか

Transformerが「大きくしやすい」のには理由があります。

  • 並列計算と相性が良い:アテンションも各層も大量の行列計算(掛け算の塊)で表され、GPUの並列演算をフルに使える
  • 構造が均質で積み増せる:同じ形のブロックを縦に積み、各層の幅を広げるだけで規模を拡大できる。設計を変えずに「大きくする」ことができる
  • 長い文脈を扱える:膨大なテキストから言語のパターンを丸ごと学べる
この「素直に大きくできる」性質が、数十億〜数兆パラメータの大規模言語モデル(LLM)を現実的にしました。

スケール則 — 大きくすると賢くなる、だから計算が爆発する

Transformer時代の重要な経験則がスケール則(Scaling Laws)です。

  • モデルの大きさ・学習データ量・投入計算量を増やすほど、性能が(おおむね予測可能な形で)滑らかに向上する傾向が観測された
  • 「アーキテクチャの工夫」より「規模を増やす」方が効きやすい、という方向に開発がシフトした
結果として、各社がモデルとデータを競って巨大化させ、学習に必要な計算量が爆発的に膨らみました。賢さがほぼ計算量で買えるなら、計算資源そのものが競争の核になります。実際、最先端モデルの学習に投じられる計算量は、世代を追うごとに桁違いに増えてきました。ここから先は、技術の話がそのまま半導体・設備投資の話へ直結していきます。誰が大量の計算を確保できるかが、そのままAI開発の優劣を左右する構図です。

計算需要がGPU・HBM・データセンターへ波及する

巨大なTransformerの学習と運用は、特定のハードへ需要を集中させました。

  • GPU:大量の行列計算を並列でこなすのに最適。AI計算の中心。仕組みはGPUの仕組みを参照
  • HBM(広帯域メモリ):巨大モデルの重みを高速にGPUへ供給する。帯域がボトルネックになりやすく需要が急増。HBMと関連銘柄
  • データセンター:大量のGPUを束ね、電力・冷却・高速ネットワークで支える。中身はAIデータセンターの解剖で詳説
チップの種類ごとの役割分担はAIチップの種類も合わせてどうぞ。技術の必然が、そのまま投資テーマの地図になっています。

投資の文脈 — 関連企業と「期待の先行」に注意

この技術連鎖の各層に、代表的な上場企業が並びます(特定銘柄の推奨ではありません)。

  • AIアクセラレータNVDA(GPU)。カスタムAI半導体やネットワークでAVGOAMDMRVL
  • メモリ:HBMを供給するMU
  • 需要側(クラウド・モデル)MSFTGOOGLMETA
注意したいのは、強い成長期待が株価に先行して織り込まれやすいこと。PERPSRが高水準のとき、株価は将来の成長を前提にしています。売上CAGRといった実態と、株価(=市場の期待)の乖離を点検する習慣が役立ちます。網羅的な整理はAI半導体銘柄ガイドへ。

学習だけでなく「推論コスト」も需要を押し上げる

需要は学習(モデルを作る)だけでは終わりません。完成したモデルを使い、ユーザーの質問に答え続ける推論(インファレンス)もまた、莫大な計算とメモリを消費します。

  • 利用が増えるほど、回答1回あたりの積み重ねが大きなコストになる
  • このコスト構造が、各社のAIサービスの採算や設備投資の規模を左右する
推論コストの中身と、それが企業の営業利益率FCFに与える影響は、別記事LLMの推論コストで詳しく扱います。技術の進化がコスト構造に直結し、それが業績に表れる、という連鎖を意識しておくと読み解きやすくなります。

まとめ — 技術の流れが投資テーマの地図になる

ここまでの流れを一本でつなぐと、AIの投資テーマの構造が見えてきます。

  1. ニューラルネットは重みを調整して学ぶ。学習は大量の計算
  2. CNN/RNNには限界(特にRNNは並列化できない)があった
  3. Transformerとアテンションが、全単語を一度に見て並列化を可能にした
  4. スケール則により「大きくすれば賢くなる」が計算需要を爆発させた
  5. 需要はGPU・HBM・データセンターへ集中し、学習に加え推論でも続く
技術の必然が半導体・メモリ・クラウドの需要を生み、それが上場企業の業績と株価につながります。だからこそ、期待先行に流されず、実態との乖離を冷静に見ることが大切です。なお本稿は情報提供・教育目的であり投資助言ではありません

よくある質問

Transformerとニューラルネットは別物ですか?
いいえ。Transformerはニューラルネットの一種です。基本となる「重みを調整して学ぶ」仕組みは同じで、その中の情報の処理方法(系列の扱い方)をアテンションという発想に置き換えたものがTransformerです。CNNやRNNと並ぶ、ニューラルネットの一つの設計だと捉えてください。
「アテンション」とは結局どういう仕組みですか?
文中のすべての単語について「どの単語がどの単語にどれだけ注目すべきか」を重みとして計算し、各単語の意味を周囲の文脈から動的に決める仕組みです。順番に依存せず全単語を一度に突き合わせるため、長い文脈に強く、計算を並列化しやすいのが特徴です。
なぜTransformerでGPU需要が急増したのですか?
Transformerの計算は大量の行列演算で、GPUの並列処理と非常に相性が良いからです。さらにスケール則により「大きくすれば賢くなる」傾向が分かり、各社が競ってモデルを巨大化させた結果、必要な計算量が爆発しました。詳しくはGPUの仕組みをご覧ください。
HBMはなぜ重要なのですか?
巨大なTransformerの重みをGPUへ高速に供給する必要があり、メモリの帯域がボトルネックになりやすいためです。広帯域メモリ(HBM)はこの供給速度を稼ぐ部品で、AI計算の規模拡大とともに需要が急増しました。詳細はHBMと関連銘柄へ。
関連銘柄を買えば良いということですか?
本稿は教育目的で、特定銘柄の推奨ではありません。AI関連は強い成長期待が株価に先行して織り込まれやすく、PERPSRが高水準になりがちです。売上などの実態と株価の乖離を確認する視点が役立ちます。情報提供・教育目的であり投資助言ではありません。
学習と推論はどう違いますか?
学習はモデルを作る工程で、大量のデータから重みを調整します。推論は完成したモデルを使って実際に回答を生成する工程です。どちらも計算とメモリを消費し、特に利用が増えると推論コストの積み重ねが企業の採算に効いてきます。詳しくはLLMの推論コストを参照してください。

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出典: ファンダは SEC EDGAR(10-K / 10-Q)、株価は Yahoo Finance。本記事は情報提供・教育目的であり、投資助言ではありません。データに誤りを含む場合があります。投資判断はご自身の責任で行ってください。 データの作り方 · 運営者情報